エネルギー管理士

エネルギー管理士とは、大量のエネルギーを使う工場で「省エネ」を監視推進する役割の人です。

「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(通称「省エネ法」)によって、一定量以上のエネルギーを使用する工場や事業者に対してはエネルギー管理者の配置が義務付けられています。

このエネルギー管理者の資格要件の1つがエネルギー管理士の資格です。

 

エネルギー管理士は国家資格であり、必置資格です。法的義務を負った工場や事業者では必須の資格となります。

 

では、エネルギー管理士の資格を所有しているとモノづくりエンジニアの転職に有利なのでしょうか。

これから資格を取得しようとすると、難易度はどの程度でしょうか。

そんなあなたの疑問にお答えしたいと思います。

 

エネルギー管理士の資格はエンジニアの転職に有利か?

エネルギー管理士とは?

冒頭で説明したように、一定量以上のエネルギーを使用する工場ではエネルギー管理士の配置が省エネ法によって義務付けられています。

具体的には、年間のエネルギー使用量が原油換算でどのくらいかで分類されます。

●3,000kl以上
第1種エネルギー管理指定工場

●1,500kl以上~3,000kl未満
第2種エネルギー管理指定工場

と指定されます。

 

また1つの工場だけでは上記条件に満たなくても、同じ事業者が保有する他の工場、本社、支店、営業所など、全て合算して1,500kl以上の場合、国が特定事業者に指定します。

 

こうしたエネルギー管理指定工場、特定事業者には省エネ法の定めにより、必要な人数のエネルギー管理者エネルギー管理員を設置することが義務付けられています。

 

このエネルギー管理者、エネルギー管理員の資格要件が、エネルギー管理士、またはエネルギー管理講習修了者となっています。

詳しくは資源エネルギー庁のホームページをご覧下さい。

 

現在、第1種指定工場は全国に7,454ヶ所第2種指定工場は7,180ヶ所あります。(データ元

業界、業種に関係なく、これらの指定工場ではエネルギー管理士の需要がある訳です。

 

また、指定工場でなくても自社の省エネ対策に関心のある工場ではエネルギー管理士を置いて日々の生産活動の中で省エネ活動に取り組んでいます。

 

工場全体のユーティリテイ設備保全、あるいはプラント関連やビルメンテなどの職種では需要の高い資格です。

あなたがその方面のメンテナンスを仕事にしようと思うなら、エネルギー管理士は絶対お奨めの資格と言えます。

 

ただし、単にエネルギー管理士の資格を持っているだけではあまり転職に有利とは言えないかも知れません。

エネルギー管理士としてどれだけ省エネの実績を残してきたか、そこがアピールに重要です。

また、電気主任技術者など他の資格も合わせ持っているとか、そうした付加価値が必要です。

 

ちなみに私が勤務していた半導体工場でもエネルギー管理士がいましたが、外部委託の形で契約していました。

常勤ではありませんでした。(エネルギー管理士は外部に委託することも可能です。)

 

このようにいくつかの工場のエネルギー管理を請け負う形で独立した人もいますが、単にエネルギー管理士だけの受注だとビジネスとしては厳しいようです。

エネルギー管理士の他に電気主任技術者など複数の資格を持ち、受注の幅を広げることが独立成功の条件です。

エネルギー管理士の仕事はどうやって探す?

単に資格から求人を探してもそれほど多くの求人は見つかりません。

主な転職エージェントのエネルギー管理士の求人件数を紹介します。

 

■エネルギー管理士の求人件数

転職エージェント 求人件数(件)
リクルートダイレクトスカウト 551
doda 363
リクルートエージェント 254
マイナビメーカーAGENT
リクナビNEXT 113

注)2021年12月調査。求人件数は時期によって増減します。

マイナビメーカーAGENTの求人件数は公式サイトにてご確認ください。リクルートエージェントに次いで多い件数となっています。

 

エネルギー管理士と言う資格をキーワードにした求人件数は表の通りで決して多いとは言えません。

資格だけを頼りに自分だけで転職先を探しても、すぐには見つからないかも知れません。

業界情報、企業情報に精通した転職エージェントを活用してください。

 

なお、ハローワークでエネルギー管理士の求人を探してもなかなか見つかりません。日本中を検索範囲にしてもわずか123件のみです。(2021年12月)

ハローワーク
ハローワーク

 

どうしてもハローワークの場合は地元の中小企業からの求人が主となるので、エネルギー管理士を必要とする規模の企業や工場が少ないのです。

ただ、地元志向のあなたにはハローワークも選択肢の1つです。転職サイトと合わせて利用してください。

エネルギー管理士の求人情報

求人件数はそれほど多くありませんが、職種は次の通りです。

●発電所・変電所の設備保全

●ビル総合管理

●ビルメンテナンス・施設管理

●プラントエンジニア(エネルギー・産業用・化学など)

●大規模工場の施設管理スタッフ

●省エネ関連のコンサルタント

こうした職種からエネルギー管理士の資格保有者に対して求人が出ています。

エネルギー管理士の他に、電気主任技術者電気工事士などの資格も需要が多く、合わせて資格を保有していると転職には大変有利です。

エネルギー管理士の年収は?

エネルギー管理士の年収ですが、大手転職サイトで調べてみると、

●400万円~600万円

この辺が目安となっています。

ただ、求人の中には600万円~800万円クラスの求人も出ています。

こうした高額年収の求人は大容量のエネルギーを消費する規模の大きな工場、発電プラントなどが勤務先となっています。

業務範囲の広さ、難易度などで年収に差が付きます。

 

年収800万円~1000万円クラスの更に高額年収の求人を探すと、エネルギー業界の営業職マーケティング職コンサル業などの求人が見つかります。

こうした求人ではエネルギー管理士の資格が必須です。

 

このクラスに興味があれば、リクルートダイレクトスカウトが絶対のおススメです。高額年収の求人をヘッドハンターがあなたに代わって探してくれます。

 

一方、経験が浅くて実績も少ないと400万円以下の年収になる可能性もあります。

ビルメンテナンスユーティリティ保全のエンジニア派遣企業などは、比較的経験が浅くても採用されやすいですが年収は低くなります。

 

エネルギー管理士検定の概要

【資格名】

エネルギー管理士

 

【どんな資格か】

●国が省エネ法によって指定するエネルギー管理指定工場特定事業者において、エネルギーを使用する設備の維持やエネルギー使用方法の監視・改善を行う仕事に必要な資格。

●国家資格であり、必置資格です。

●エネルギー管理士の資格を取得する方法は2通りあります。

・一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)が実施する試験に合格する。

・ECCJによるエネルギー管理研修を受講し、修了する。(修了試験に合格すること)

 

【受験資格】

●特に受験資格を必要としません。誰でも受験可能です。

●ただし、試験に合格しても免状をもらうには省エネ実務1年以上の実績が必要です。

●実務の時期は試験の前後を問いませんが、「エネルギー使用合理化実務従事証明書」の提出が必要となります。

●エネルギー管理研修を受講するには、申し込みまでに3年以上の実務経験が必要です。

免状の申請についてはECCJのホームページを参照ください。

 

【受験方法】

●願書受付
5月上旬~6月上旬

●試験
8月上旬

●合格通知
9月中旬

●試験場
北海道から沖縄県まで13会場。詳細はECCJのホームページでご確認ください。

●受験料
17,000円

●マークシート方式の筆記試験です。
必須基礎科目と専門科目があります。専門科目は熱分野電気分野の2種類がありどちらかの選択となります。

●研修受講料
ECCJによるエネルギー管理研修の受講料は70,000円です。詳細はこちら

 

【試験問題】

エネルギー管理士検定の出題は必須基礎科目と選択専門科目に分かれています。

●必須基礎科目
・エネルギー総合管理及び法規(80分)

●選択専門課目

熱分野と電気分野のどちらか選択です。

【熱分野】
・燃料と燃焼(80分)
・熱利用設備及びその管理 (110分)
・熱と流体の流れの基礎  (110分)

【電気分野】
・電気の基礎(80分)
・電気設備及び機器  (110分)
・電力応用  (110分)

選択科目をどちらで受験しても合格してもらう免状は同じエネルギー管理士の免状です。区別はありません。

過去の問題と正解についてはこちらのサイトで見ることが出来ます。参考にしてください。

『過去の試験問題』

 

【合格率・難易度】

エネルギー管理士検定の直近5年間の合格率は以下の通りです。

年度 受験者(人) 合格者(人) 合格率
令和3年 7,721 2,480 32.1%
令和2年 7,707 2,828 36.7%
令和元年 9,830 3,207 32.7%
平成30年 9,912 2,770 27.9%
平成29年
10,558 3,002 28.4%

 

表からもお分かりのように合格率は30%前後です。ペーパーテストのみですが過去問などを中心にしっかり準備しないと合格は難しそうです。

 

選択専門科目で熱分野と電気分野ではどちらが難易度が高いか、ネット上で体験記も載っています。

しかし、これは試験を受けた人がどんなバックグランドを持っているかで当然優劣が変わります。あまり参考にならないかも。

 

【設備保全の転職に有利か】

エネルギー管理士は省エネ法によって指定されたエネルギー管理指定工場、特定事業者においては必置資格であり、そうした求人には必須となる資格です。

 

ただし求人件数はそれほど多くないため、勤務地、年収、業種など希望条件を満たす案件を見つけるのは難しいかも知れません。

複数の転職エージェントサービスに登録するなど、アンテナを広範囲にめぐらす必要があります。

 

こんな求人の探し方もあります

大手転職エージェントサービスのdodaで、

「エネルギー管理士」

をキーワードに求人検索しても362件しか見つかりません。(2021年12月)

 

しかし、

「エネルギー管理士 資格保有者が興味関心のある転職・求人情報一覧」

というくくりで求人検索すると約2,000件の求人が出てきます。

 

ただし、「興味関心のある」という定義がイマイチあいまいで、なんでこんな求人がと、不思議な案件も多数出てきます。

 

ただ、イメージが固定されたまま探すより、かなり柔軟に広範囲に探すことが出来るのは確かです。

多少なりとも省エネに関係ありそうな求人、無理やりこじつけたような求人まで出てきます。

例えば、不動産物件の営業職大型量販店の商品企画鉄道の施工管理産業機械の営業職などです。

 

省エネという観点からお客様へ商品やサービスの提供、企画を考える仕事です。

実際、エネルギー管理士であることがどの程度有利に作用するのか分かりませんが、なかなか面白い視点です。

求人探しに行き詰まったらこんな視点で探してみるものアリです。

モノづくりエンジニアの専門資格

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