目視検査2

モノづくりの現場には必ず検査工程が必要です。

不良品を見つけることはむろん、検査結果を前工程にフィードバックすることで品質向上、品質改善へつなげることが出来ます。

 

そして検査工程で働く検査員は向き、不向きがハッキリした仕事です。

適性のある、検査に向いている人は未経験者でも採用され、成果を出すことができます。

ここが検査工程と他の生産工程が少し違う点です。

 

半導体工場で20年間に渡って検査工程に関わってきた私の経験から、検査員に向いている人、向いていない人を解説します。

あなたも検査員の適性があるかどうか、ぜひこの記事でチェックしてみてください。

 

なお、検査ではなく品質管理全般についてはこちらの記事を参考にしてください。

品質管理の仕事に向いている人・不向きな人

検査の仕事は向き、不向きがハッキリしている

どんな仕事にも向き、不向きはあります。検査の仕事も例外ではありません。

そして精度の高い検査、高品質を要求される検査ほど向き、不向きがハッキリ出ます。

 

例えばある製品の検査をするのに、適性があって検査に向いている人がやると1日に500個の検査が出来ます。

一方、不向きな人がやると1日に300個しか検査出来ません。生産性の点で大きな差がつきます。

そして生産性以上に検査品質でも差がつきます。1日に500個検査出来る人の方が300個しか出来ない人より検査の品質は高いのが普通です。

300個の検査員は時間をかけてしっかり検査してるのだから、500個の検査員より不良を見つけるはずだ、と思いがちですが実際には逆です。

ここが検査と言う仕事に向き、不向きがハッキリしていると言うゆえんです。

 

検査員の適性

 

正確に検査出来る人はスピードも速く、遅くしか検査出来ない人は正確さでも劣ります。

そして適性の有り無しはトレーニングや経験ではカバー出来ない面もあり、向いてない人が何年頑張ってもいい検査員にはなれない事が多いのです。

 

逆に検査の適性がある人、検査に向いている人は短期間のトレーニングでも現場で活躍することが可能です。

それゆえ検査員の採用にあたっては適性さえあれば未経験者でも採用されるのです。

検査業務に向いている人

では、どんな人が検査に向いているのでしょうか。検査の適性とは具体的にはどんなことでしょうか。

 

まず私が過去何年も検査員の方々を見てきて、優秀だなと思う人は例外なく性格が温厚で素直な人ばかりでした。

我の強い人は検査には向いていません。

 

検査とは何かを作り出す仕事ではありません。自己主張してそれを形にする仕事ではないのです。

与えられた検査規格、検査手順に沿っていかに正確に、いかに速く検査するか、そこが問われる仕事です。

柔軟に様々な条件設定に対応する能力が必要となります。

 

「難しい検査規格だなぁ。こんなのホントに出来るの?」

「面倒な手順だなぁ。自分でやってみろと言いたい。」

 

そんなふうに思っていたとしても、とにかく指示された通りにやってみる、何とかマスターしようと努力する、その姿勢が大事です。

 

では、以下に検査に向いている人の特徴をまとめておきます。こんな人が検査に向いている人です。

 

検査員に向いている人

1)同じ作業を継続するのが苦にならない人。

2)顕微鏡をのぞいていても気分が悪くならない人。(目視検査の場合)

3)集中力が長時間継続できる人。

4)物事を丁寧に、正確にやろうとする人。

5)自分のミスを正直に認めることが出来る人。

6)忍耐力の強い人。

7)手先の器用な人

8)責任感が強くていい加減な仕事をしない人。

9)素直に人の話を聞ける人。

10)自己主張の強過ぎない人。

 

この10項目を全てを完璧に満たすような人は現実にはいません。そこまでパーフェクトでなくても優秀な検査員になれます。

 

ただ、10項目中、5項目以上がNGと言う人は、他の仕事を探した方がいいです。

検査業務に向いていない人

次に検査業務に向いていない人を述べてみましょう。要するに先ほどの検査員に向いている人の反対が向いていない人です。

 

もし、あなたがそんなタイプの人だったら、仕事は苦痛以外の何物でもないでしょう。あるいはあなたが苦痛を感じなくても検査工程の責任者にとっては苦痛です。

即刻次の仕事を探した方がいいです。

 

検査員に不向きな人

1)同じ作業を継続するのが苦手な人

2)顕微鏡をのぞいていると気分が悪くなってしまう人(目視検査の場合)

3)集中力が長時間継続出来ない人

4)雑な人、がさつな人

5)じっと黙って仕事が出来ない人

6)何事にも忍耐力のない人

7)手先の不器用な人

8)責任感のない人、いい加減な人

9)飽きっぽい人

10)自己主張の強すぎる人

 

私の経験から、上記のような人に検査員の仕事は向きません。本人も辛いし不良品の流出を発生して会社も困ります。

完全なミスマッチですから他の仕事をやってもらう方が本人にも会社にもいいことです。

 

むろん、一口に検査と言っても色んな検査があります。顕微鏡を使う目視検査員もあれば検査機を使うマシンオペレータに近い検査員もあります。

 

検査対象が半導体や電子部品のような微細なものから金型や機械部品のような大きくて重量のある物だったりします。

また検査の判断基準によって官能検査なのか、寸法検査なのか分かれます。

 

検査もいろいろ

 

こうした検査の種類によってそれぞれ検査員に必要な適性も変わってきます。先ほどの10項目はあくまで検査一般に言えることを並べてみました。

あなたが担当する検査業務に必ずしも全部当てはまるとは限りません。しかし、間違いなく多くは当てはまると思います。

 

検査業務だから丁寧な仕事をする人、正確な仕事をする人が向いています。それは確かにそうなのですが、過剰に神経質になってしまう人も検査には向いていません。

不良の見逃しが怖くて、念には念を入れて、その上更に念を入れて検査をしてしまう人です。標準タイムの2倍も3倍も時間がかかってしまうと検査員としては失格です。

検査に向いている人は最初は遅くても慣れてくると標準タイム内で検査が出来るようになります。

それがいつまで経っても遅いままだったり、早くても不良品の見逃しが多ければ検査員としての適性を疑います。

 

以上が検査員に向いていない人、向いている人の適性です。

こうした適性は正社員だろうが派遣社員だろうがパートさんだろうがアルバイトだろうが、関係なく当てはまります。

 

検査規格は適正か?妥当か?

検査員の適性や能力判定するのに、そもそもの検査規格、検査手順が正しく設定されているか、作られているか、と言う検証が必要です。

 

最初から無理な設定をしていれば、どんなに適性のある検査員でも標準作業に達しません。検査スピードや検査品質の設定は合理的でなくてはなりません。

 

検査規格

 

現場の優秀な検査員になれば、そうした検査規格や手順が妥当かどうかの判定業務にも参画できるようになります。

そこまでキャリアアップ出来れば単なる検査員ではなく品質管理、品質保証の担当者と言えます。

 

検査の仕事のメリット

あなたが検査の仕事に向いている、適性があると判断するなら、ぜひやって欲しいと思います。

なぜなら、検査の仕事にはこんなメリットがあるからです。

1.検査の仕事は雇用が安定している。

早い話、クビや左遷になりにくい、と言うことです。何しろ検査工程は品質に直結しています。

優秀な検査員はラインから外されません。貴重な戦力として認められます。

 

例えあなたが無資格、未経験でスタートしたとしても、検査の適性があって人並み以上に努力すれば、スーパー検査員の地位を築くことも可能です。

 

スーパー検査員
めざせ!スーパー検査員

 

ただし、頻繁に不良品を見逃したり、著しく検査スピードが遅くて生産性が悪い検査員は逆に我慢して使ってもらうことが出来ません。

即刻クビか配置転換となります。

2.人間関係のわずらわしさがない。

一概には言えませんが、検査工程の仕事は対人関係で悩むことが少ないです。

人間を相手にする仕事ではなく、製品を相手にする仕事だからです。

 

ただし、検査工程のリーダーや責任者になるとそうもいきません。

部下の指導、他部署との連携、顧客との窓口など、検査の実務以外の仕事が増えてきます。

人を相手にする仕事は検査員の適性だけでは務まりません。

3.品質を支えているプライド、やりがいを持てる

検査の内容にもよりますが、出荷検査を担当している検査員は製品のみならず企業の信用を背負って仕事をしています。

企業の信用

 

むろん、製品の品質は検査だけで実現している訳ではありませんが、最後の砦であることは間違いありません。

出荷検査で不良品を見逃せば、そのまま市場に出て行ってしまうのですから。

市場の品質評価を支える一員としてのプライド、やりがいを感じることの出来る仕事だと思います。

 

4.快適な環境で仕事が出来る

これも検査内容にもよるのですが、一般には検査工程の環境は快適です。

温度管理、湿度管理が行き届き、ごみやほこりのないクリーンな環境で検査することが多いはずです。

また、検査員が集中出来るように防音対策がしてあったり、照明にも気を使った環境が用意されます。

5.資格や実務経験がなくても採用される

これも検査内容によりますが、何かの資格や実務経験がなくても応募出来る求人が多数あり、採用される可能性も十分あります。

先ほども繰り返し説明したように、検査に向いているかどうか、適性が重要視されます。

 

ただし、無資格、未経験でもやれる検査の仕事だと派遣社員やパート募集が多く、正社員の求人は少ないです。

中には正社員募集の求人がありまが、実際には派遣スタイルの無期契約社員のケースが多く見られます。

これを正社員と表記して求人しているのです。

 

無期契約社員は有期契約と違って半年や1年ごとの契約終了に伴う更新の必要がありません。

雇用は安定しますが、働き方としては派遣社員と同じです。

6.品質管理、品質保証の仕事へキャリアアップの可能性がある

検査員としての適性があって、しっかり実績を残すことが出来れば、更に仕事の枠を広げて検査だけでなく品質管理、品質保証の仕事へキャリアアップ出来る可能性があります。

 

検査現場を熟知した品質管理担当者は貴重です。どんな仕事でもそうですが、現場を知っている人間は強いです。

 

ただし、品質管理へのキャリアアップには検査員以上の適性が求められます。メンタルの強さやコミュニケーション能力、加えて品質管理のツールを習得など簡単ではありません。

しかし、出来るものならぜひ、あなたにはそこを目標に頑張って欲しいと思います。

 

 

検査は楽なことばかりではない

今、検査の仕事をお奨めする理由を述べましたが、いいことばかりではありません。どんな仕事でも苦労は必ずあります。

私の経験上、最も辛いことは不良品を流出させた時の責任です。

 

人間のやることですから、100%完全と言うことはあり得ません。

出荷検査もそうです。自分ではミスなくやったつもりでも、不良品が流出してしまう可能性もあります。

 

検査員2
どんなに優秀な検査員でもミスする可能性はある

 

大抵の検査工程ではトレーサビリティの観点から誰がどのロットの検査を行ったか記録を残します。

万一市場に不良品が流出した場合、それを検査したのは誰か分かります。

 

その場合、会社が検査員個人に対して責任追及することはありません。しかし、原因の追究と再発防止は必ず行います。

再教育、再トレーニング、その結果によっては職場の異動まであり得ます。検査員としては不向きと判定されることがある訳です。

検査から外されることは辛いことですが、ある面ほっと出来ます。不良品流出の不安からは解放されます。

 

むしろ辛いのは再び検査員として不良流出のリスクと向き合うことです。

当然、検査員としては不良を見逃してしまった責任を感じます。

次から見逃さないように気持ちを切り替えればいいのですが、中には責任感が強すぎてプレッシャーとなってしまう人もいます。

こうなるともう、仕事そのものが苦痛の固まりとなり、まともに検査が出来なくなる人もいます。

 

検査と言う仕事は責任感の強い人でないと務まらない仕事ではありますが、その責任感ゆえに辛い仕事とも言えます。

それを乗り越えるには自ら検査スキルを磨くことしかありません。

 

検査員の仕事を紹介してくれる転職サイト

最後に検査員の求人が多い転職サイトを2つ、紹介しておきます。

工場ワークス、工場求人ナビの2つです。

どちらも工場系の仕事に特化した転職支援サービスで、検査員の仕事が全国にあります。

どちらも完全無料で利用できます。

工場ワークス

工場ワークス新

項 目 概 要
サービスの特徴 工場の仕事に特化した転職サイト。未経験、資格なしで応募できる求人多数。
検査員の求人 4,000件以上
求人が多い業界 自動車・精密機械・家電・半導体・化学
強みを発揮するエリア 全国
未経験者の応募 検査求人の85%以上が未経験者歓迎
主な対象年齢 求人が多いので全年代で利用可能
その他 工場の仕事に特化しているので、サービスが手厚い。
注意点 求人の85%以上は派遣社員募集。社員募集は少ない。

 

詳細記事を読んでから、登録するか決める

【工場ワークス】

※工場ワークスのプロモーションを含みます。

工場求人ナビ

工場求人ナビ新

項 目 概 要
サービスの特徴 日総工産で請け負っている、日本全国の工場系の仕事紹介
検査員の求人 1,000件以上
求人が多い業界 自動車・半導体・精密機器・電気・電子
強みを発揮するエリア 全国
未経験者の応募 検査求人の90%以上が未経験者歓迎
主な対象年齢 若い人向けの求人が多い
その他 寮完備の求人が多く、他にも様々な特典用意
注意点 求人の90%以上は派遣社員募集。正社員募集は少ない。

 

【工場求人ナビ】

※工場求人ナビのプロモーションを含みます。

 

付録:スーパー検査員ゆえにボツになったPR動画

かつて私が勤務していた半導体工場でホームページに検査工程のPR動画をアップしようと計画したことがありました。

そこで検査工程のナンバーワン検査員の検査風景を撮影しました。しかし、結局その動画はアップすることなくお蔵入りとなりました。

なぜだと思いますか?

 

その検査員の検査スピードが余りに速くて、動画を見た人に信じてもらえそうにないと判断したからです。

まさに常人には考えられないようなスピードで検査します。しかも正確です。

 

でも、動画ではその正確さを証明することが出来ません。あんなに速くては正確な検査がやれるはずがないと不審に思われる危険性を感じました。

あるいは、動画を早送りで細工していると思われる危険性も感じました。現場を撮影した身内の私でさえそのリスクを感じたのです。

そのくらい、彼は検査の達人、熟練の技を持っていました。

 

困った男性1
すご過ぎて、ボツだ・・・

 

検査員全員が彼のように達人になれるわけではありません。

また、なる必要もありません。安定した検査工程を確立するには達人を前提とした能力計算は危険です。

あくまで標準能力をベースに成り立つ検査工程でないと安定しません。普通の検査員になってくれればいいのです。