自主保全士

「自主保全士の資格は転職の役に立ちますか?」

こんな質問をネット上でよく見かけます。

あるいは、

「この資格を取得すると社内で評価されますか?」

といった質問も見かけます。

実際のところはどうでしょう?

 

私が20年間、半導体工場で設備保全や生産技術の仕事をしてきた経験から言えば、製造職のスキルアップには大変有益な資格と言えます。

しかし、自主保全士の資格を取得したからと言って、設備保全や生産技術の求人に採用される訳ではありません。

エンジニア職としての知識やスキルを保証する資格ではないからです。

 

では、自主保全士の資格は転職にどう活かせばいいでしょう。

資格の特徴、位置づけをしっかりつかんで転職に臨む必要があります。

長年、モノづくりエンジニアの採用にも関わってきた私の体験もまじえて解説します。

 

自主保全士とは?

自主保全士と言う資格は、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が認定する民間資格であり、2001年に創設された資格です。

製造部門のオペレーターが生産設備の日常点検レベルを自ら行うための知識、技術を身に着ける、スキルアップの為の資格です。

自主保全士の資格を持ってることは、機械に強いオペレーターであることの証となります。

 

自主保全士の認定者数は、

2001年から2019年まで、

●累計 187,391名

●内訳ー検定試験認定 123,314名

●内訳ー通信教育認定   64,077名

 

となっています。

『データで見る自主保全士』より(公益社団法人日本プラントメンテナンス協会)

 

自主保全士募集の求人はほとんどない!

いきなりですが、実は「自主保全士」と言うキーワードで求人検索しても、ほとんど見つかりません。

求人件数の多いリクルートエージェントやdodaを使って検索してもゼロか、わずか数件のレベルです。

転職エージェントだけでなく、ハローワークでも自主保全士をキーワード検索してみましたが、48都道府県で17件でした。(2021年11月検索)

 

自主保全士の求人はこの数年、ずっと見てるけど変わりません。「自主保全士」と言う資格名での需要は転職市場にはほとんどありません。

 

トラブルで悩む

 

これが転職市場における自主保全士と言う資格の評価です。同じ機械の保全資格である機械保全技能士とはえらい違いです。

 

自主保全士の求人件数が少ない理由とは?

今も説明した通り、自主保全士の資格で求人を探してもほぼ見つかりません。

その理由は主に次の2つです。

 

①そもそも資格の認知度が低い。

保全要員の求人を出す企業にとって認知度や需要の高い資格は機械保全技能士や電気主任技術者などの国家資格であり、民間資格である自主保全士は認知度が低い。

 

②資格そのものには需要がない。

自主保全士はあくまで製造部門のオペレーターが自らのスキルアップを目的に取得する民間資格です。

早い話、自主保全士の資格保有者がいないからと言って企業が困ることはありません。資格を持っていなくても相応の知識、技術を持ったオペレーターがいれば問題なしです。

 

業務独占資格の電気工事士や、必置資格の電気主任技術者とは根本的に位置づけが違います。資格そのものには需要がありません。

この点については国家資格である機械保全技能士も同様なのですが、難易度や認知度に差があって自主保全士は求人が少ないのです。

 

実は自主保全士は求められる人材なのです!

何だか自主保全士の資格に対して否定的な、ネガティブなことばかり書いてきました。しかし、自主保全士が全く転職の役に立たない訳ではありません。

 

何度も説明しているように、自主保全士とは製造部門のオペレーターで自分の担当する設備を自ら日常点検レベルで保守が可能な知識、技能を持った人です。

 

すなわち設備保全の基礎知識、スキルを持っている人です。また資格を取得するくらいですから仕事に対する意欲、向上心も持っている人です。

 

マシンオペレーターにそんな自主保全が出来る人材はそうそういません。貴重な人材なのです。資格に需要はなくても、人材には需要があります。

従って、自主保全士の価値を評価してくれる求人を見つけることが重要です。

 

実際、件数は少ないのですが、自主保全士については次の2種類の求人が出ています。

 

①製造部門で自主保全の出来るマシンオペレーターの求人。

②実務経験をもった、設備保全エンジニアの求人。

 

自主保全士は①の求人が多く、②はごくまれです。

②の場合は自主保全士より機械保全技能士の方が要求されます。

しかし、自主保全士としてそれなりのキャリア、実績があれば②の求人への応募も可能だし、採用される可能性もあります。

 

設備保全

 

あなたが自主保全士の資格を活かした転職を考えるなら、保全のできるマシンオペレーターの求人か、比較的難易度の低い保全専門職がねらい目となります。

 

自主保全のスキルを持ったマシンオペレーターに応募する

まず、自主保全のスキルを持ったマシンオペレーターとして転職する方法から説明します。

私が勤務していた半導体工場では、ほとんどの工程でマシンオペレーターが日常点検を行っていました。設備によっては簡単なチョコ停の解除や、アラームの解除も教育していました。

 

同じような工場、生産ラインは業種を問わず、いくらでもあります。特別珍しいことではありません。

実際、自動車工場や半導体工場、家電工場や精密機器工場でもマシンオぺレーターが自主保全を行っています。

 

設備保全の専門部署に依頼しなくても、製造部門のオペレーターが対応出来ることで色んなメリットが生まれます。

例えば、

●設備の停止時間短縮

●潜在的欠陥の早期発見

●保全専門部署の負担軽減

●オペレーターのモチベーションアップ

などです。

いわゆる多能工化の一環としてオペレーターにも保全業務の一部を可能にする取り組みは多くの工場でやっていることです。

工場の生産ラインではオペレーターと保全を兼任出来る人材を求めています。

 

君だ!

 

つまり、自主保全士、と言う資格で求人を出している企業は少ないのですが、実は自主保全士と言う人材を求める企業は多数あるのです。

 

従って、あなたが自主保全士の資格やキャリアを活かす転職を探すなら、「自主保全士」で求人検索するのではなく、「マシンオペレーター」と言う職種で検索すべきなのです。

それも、

「設備保全、メンテナンス業務を含むマシンオペレーター」

の求人を探して下さい。

 

単に設備のオペレーションしか出来ない人材より、自主保全も可能な人材の方が採用される可能性は高いし、優遇される可能性も高いのは当然です。

収入面や福利厚生など、条件面で有利になることが期待出来ます。

 

通常マシンオペレーターの求人はどの転職サイトでも派遣社員募集が圧倒的に多いです。

しかし、自主保全も可能となれば、同じ派遣スタイルでも無期契約社員として採用される可能性も高くなります。

無期契約社員として採用されれば、有期契約の派遣社員に比べてメリットが大きいです。

こちらの記事も参考にしてください。

【無期契約社員】と【正社員】の違いとは?エンジニアを目指すなら?

 

では、ここまで説明してきた自主保全の出来るマシンオペレーターとして求人を探すのに最適な転職サイトとして、工場ワークス、工場求人ナビの2社を紹介します。

 

マシンオペレーターの求人が8,580件あります。他にもメンテナンス・保全職の求人が2,027件あります。(2021年11月)

 

マシンオペレーターの求人が880件あります。他にもメンテナンス・保全職の求人が100件ほどあります。(同)

 

設備保全のエンジニアとして転職先を探す

次に、自主保全士としてのキャリアを活かして設備保全の専門職へ転職する方法について説明します。

マイナビメーカーAGENT、リクルートエージェントなど、大手の転職エージェントサービスで設備保全の求人を見るとほぼ8割以上の求人で「応募には保全経験必要」とあります。

つまり、未経験者ではなく実務経験者を求めているのです。

 

その一方で、専門資格を応募の必須条件にする求人はそんなに多くありません。

設備保全の求人は資格より経験が重要視される傾向が強いのです。

 

そこであなたが自主保全士の資格を持ち、定期点検などの実務経験あれば設備保全の専門職へ応募可能です。

むろん、応募は可能でも仕事内容によっては自主保全士のキャリアでは不十分として採用されないこともあるでしょう。

 

しかし、求人の中には自主保全士のキャリアでも十分務まる保全業務も多数あります。そうした求人に応募すれば採用の道が拓けます。

 

私が勤務していた半導体工場でも、1台がン億円もするような設備だと、その保全は専門スタッフしか手が出せませんでした。自主保全士の資格を取得するくらいでは到底手が届きません。

 

その一方でそれほど高度な専門知識やスキルがなくても保全が可能な設備もありました。設備保全の適性のある人材なら、数週間程度の教育、トレーニングによって十分保全が務まるのです。

この、「設備保全の適性のある人材」には自主保全士も当然含まれます。

 

書類選考や面接だけで設備保全の適性を見極めることは難しいものです。

そこに「自主保全士」と言う資格があって、その資格を使った仕事の経験があれば、これは立派に採用に向けての客観的判断材料になります。

 

このように、求人を出す企業が求めているのは「自主保全士」と言う資格ではなく、保全業務の基礎知識や技能を身に着けた人材です。保全の経験を持つ人材です。

 

具体的な求人としては、

「保全業務の経験のある方、または未経験でも適性のある方」

といった求人になります。

求人の探し方としては、機械保全技能士で紹介した転職エージェントサービスがおすすめです。

設備保全の仕事を転職エージェントで探す

 

自主保全士検定の概要(2021年 11月時点)

【資格名】

●自主保全士

 

【どんな資格か】

●製造部門のオペレーターを対象に、自主保全を行うために必要な技能や知識を認定する資格で、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が認定する民間資格です。

●自主保全とは設備を使用するオペレーター自身が行う日常点検レベルの保全活動のことです。

●2001年から始まった資格で、等級には1級と2級があります。

●1級自主保全士は、チームリーダーとして自主保全の計画立案が出来、メンバーの保全活動について実践指導が出来る知識と技能を持っている。

●2級自主保全士は、製造部門の一員として生産・製造を行いながら、自分の担当する設備や工程の自主保全が出来る。

つまり、2級自主保全士は自分のことは自分でちゃんとやれる、1級は自分のことだけでなくチーム全体の面倒をみることが出来る、そんな保全能力を認定する資格と言えます。

 

【受検資格】

●1級自主保全士検定

実務経験4年が必要です。実務年数には製造、生産、保全、及びスタッフとしてこれらの業務を支援した年数を含むことが可能です。

また、途中で転職していれば転職前の年数を加算することも出来ます。

 

●2級自主保全士検定

実務年数の制限はありません。初心者でも受験可能です。

また、1級、2級、共に学歴や他の資格の制限はありません。

 

【受験方法】

●願書受付 7月

●試験日 10月

●試験場
全国の指定公開会場(30か所以上)又は15人以上まとまれば企業内で受験可能。(15人未満の場合有料で監査員派遣可能)

●受験料

・1級 9,350円(税込)
・2級 7,200円(税込)
*2021年11月時点

 

【試験形式】

①1級、2級ともに学科試験と実技試験があり、試験時間は両方合計で120分です。120分は連続して行われ、時間配分は受験者の自由です。

②1級、2級ともに学科試験は〇×の正誤判定方式で100問あります。

③1級の実技試験は多肢選択式に記述式計で10課題あります。実際に工具などを使った実技はなくペーパーテストになります。

④2級の実技試験は多肢選択式で10課題あります。

⑤学科、実技、両方ともに100点満点で75点以上が合格ラインです。学科のみ、あるいは実技のみの合格判定はありません。

 

【試験科目】

1.生産の基本
安全衛生や5S、品質、工程管理、職場のモラールなど8項目。

2.設備の日常点検
自主保全の基礎知識、自主保全活動支援ツール、初期清掃など9項目。

3.効率化の考え方とロスの捉え方
TPMの基礎知識、ロスの考え方、設備総合効率・プラント総合効率など5項目。

4.改善・解析の知識
改善・解析手法

5.設備保全の基礎
締結部品・潤滑・空圧・油圧など9項目

以上の5科目から出題されます。

ご覧になってお分かりのように、設備保全、メンテナンスに必要とされる幅広い知識を問われます。

 

【過去問】

過去の出題例がこちらのサイトで見ることが出来ます。

『過去問サンプル』

この過去問サンプルを見ました。

以下、私の感想です。

●2級自主保全士の検定問題は非常に基礎的、基本的なものばかりです。

保全業務を行う上では常識レベルで知ってくべき内容が問われます。日頃の日常点検で行う作業の中から出題されます。

●基礎知識をしっかり学んでいれば合格ラインの75点はさほど難しくありません。

●1級自主保全士の検定問題は2級より更に専門的、突っ込んだ問題が出題されます。

過去の問題集で事前準備が必要かと思います。

 

【合格率】

2020年における1級自主保全士、2級自主保全士の合格率は以下の通りでした。(通信教育受講者を除く)

等 級 受験者数 合格率
自主保全士1級 3,749人 29.8%
自主保全士2級 7,556人 48.8%

過去の合格者数についてはこちらでご確認下さい。➡『データで見る自主保全士』

この検定はあくまでも製造部門のオペレータによる自主保全を対象にしており、出題された問題そのものはそれほど難問ではありません。

1級はともかく、2級は過去問を中心にしっかり準備すれば合格出来ると思います。

 

【設備保全の転職に有利か】

●設備保全の求人で、自主保全士を応募の資格に指定する求人はほとんどありません。資格を持っているだけでは有利とは言えません。

●マシンオペレーターで自主保全ができる人材には需要があります。単に資格をアピールするのではなく、キャリア、実績と合わせてアピールすると有効です。

●あなたが現在製造部門のマシンオペレーターで、今後設備保全の仕事をやりたいと考えているのであれば、まずはこの資格から取得するのはアリです。

 

まとめ

機械保全技能士は国家資格で保全専門のエンジニア向けの資格です。

一方、自主保全士は民間資格で製造現場のマシンオペレーターが自分で定期点検レベルの自主保全ができることを目指す資格です。

 

従って設備保全の求人に、応募資格として自主保全士が登場することはめったにありません。この資格を持っているだけでは転職に有利とも言えません。

 

しかし、設備保全の約8割の求人にでてくる応募資格、「保全経験者であること」を満たす可能性はあります。

求人がどんなレべルの保全能力を要求しているのかによりますが、あなたのキャリア、保全要員としての適性、今後のやる気次第で道は拓けます。

モノづくりエンジニアの専門資格

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